遺留分侵害額請求権とは?~手続き方法と時効について~
■遺留分侵害額請求権とは
被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分が認められています。遺留分とは、法定相続人に保障された最低限の取り分のことをいいます。
遺留分が問題となるのは、被相続人が遺言書を作成しており、その遺言の効力によって法定相続人の取り分が少なくなっている場合です。例えば、家族以外の人に相続財産の全てを相続させるとか、一部の相続人にのみ相続させるといった遺言書が作成されていた場合、法定相続人としては相続への期待を害されることになります。
民法では、このような法定相続人の期待を保護するために遺留分を定め、これに満たない金額しか相続できない場合には、受遺者(遺言の効力により財産を受け取る人)に対して不足額の支払いを求めることができることとしています。この権利のことを、遺留分侵害額請求権といいます。
なお、遺留分割合は原則として相続財産全体の2分の1とされ、法定相続人が直系尊属のみの場合には例外的に3分の1とされています。この割合に各法定相続人の相続分をかけることで、法定相続人個々人の具体的遺留分が算出されます。
■遺留分侵害額請求の手続き
①遺留分侵害額請求を行う旨の意思表示・協議
まず、遺留分侵害額請求の準備として、相続人や相続財産について調査を行います。ここから遺留分を計算し、遺留分侵害額請求としていくら請求できるのかを確認します。
その上で、遺留分侵害額請求の手続きとして最初に行うのが、権利行使の意思表示です。この意思表示は、時効の完成猶予事由として重要な意味を持つため、内容証明郵便を利用して証拠に残しておくのが安全でしょう。
この意思表示や、これに続く協議によって受遺者が納得し、請求に応じるようであれば、手続きは終了となります。
②調停
話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に対して申立てを行い、遺留分侵害額請求調停を開始します。
調停では、当事者が交互に調停室に入って自身の言い分を調停委員に主張します。このような期日を何度か繰り返して和解が実現すれば、調停証書が作成されます。調停証書があれば、後になって相手方が態度を変えたとしても、強制執行による解決が実現できます。
③民事訴訟
調停により合意に至ることができなかった場合、遺留分侵害額請求訴訟を提起します。
訴訟では、請求の要件となる事実を主張立証していき、これがすべて認められれば勝訴となります。また、訴訟の状況によっては判決前に和解が成立する場合もあります。
判決が確定すれば、相手が支払いに応じなくても強制執行により支払いを実現することができます。
■遺留分侵害額請求権と時効
遺留分侵害額請求権の消滅時効は、遺留分侵害を知った時から1年が経過すると完成します。例えば、相続人が被相続人の死を知り、その後に遺言書の存在を知ったという事例では、遺言書の存在に気付いた時点で遺贈による遺留分侵害に気付いたこととなり、時効期間のカウントが開始します。
また、相続の発生や遺留分侵害を知らない場合であっても、相続の開始から10年間が経過すれば、遺留分侵害額請求権は消滅します。これは除斥期間と呼ばれる仕組みで、相手方が意思表示しなくても権利が自動的に消滅するという点で時効とは異なっています。
遺留分侵害額請求権の時効期間は極めて短いため、迅速な対応が求められます。
具体的には、まず、内容証明郵便によって権利行使の意思表示を行います。これにより時効の完成猶予の効果が発生し、意思表示から半年間は時効期間のカウントが止まります。
そして、協議による解決が見込めない場合には、調停の申立てや訴訟の提起という手段をとります。これにより、調停成立・判決確定までは時効期間のカウントが止まります。そして、調停成立・判決確定により支払いが認められた場合には、その時点から新たに10年間の時効が進行し、その前に強制執行を行えば確実に遺留分相当額を取得することができます。
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